病気に備える

「加熱式たばこ」に切り替えたら、生命保険の「非喫煙者割引」 を受けられる?

加熱式タバコのイメージ

生命保険には、非喫煙者の保険料が割引になる制度を導入している商品があります。喫煙者に比べ非喫煙者の方が死亡や病気のリスクが低いということで、非喫煙者の保険料を優遇する仕組みです。
喫煙しない人であれば、保険料が10~30%安くなることもあり、人気を博しています。
そこで、気になるのが最近流行の「加熱式たばこ」に切り替えたら、もしかしたら、非喫煙者割引が適用にならないかということ。早速、各方面に取材しました。

喫煙で肺がんになるリスクが4倍以上に

喫煙者の方の保険料が高いのは、非喫煙者に比べて病気や死亡のリスクが高いためです。喫煙は、がん、脳卒中、虚血性心疾患といった命に関わる病気を始め、歯周病、女性であれば早産や胎児の発育遅延など、あらゆる病気との因果関係が認められています。 中でも、重大な病気の筆頭が「がん」です。国立がん研究センターの研究では、非喫煙者に比べ喫煙者が肺がんになる可能性は男性で4.4倍、女性で2.8倍も高いことがわかっています(※1)。
(※1  出典:国立研究開発法人国立がん研究センター がん対策情報センターホームページ 「6.発生要因」)

近年の健康ブームなどで喫煙者数は減少傾向にありますが、厚生労働省による「健康日本21(第2次)」のデータによると、習慣的に喫煙している人の割合は、成人男性で30.1%、成人女性で7.9%でした。まだまだ一定数の愛煙家がいることが伺えます。(※2)
(※2 出典:厚生労働省「平成27年国民健康・栄養調査結果の概要」31ページ)

非喫煙者割引は実際にどのくらい安くなる?

非喫煙者割引は、保険会社によって「」といったり「ノンスモーカー率料」といったり名称はさまざまですが、ここでは非喫煙者割引と呼ぶこととします。非喫煙者割引は定期保険をはじめ、収入保障保険や医療保険、ごく一部ですが終身保険にも適用され、導入範囲が拡大しています。中には健康状態を測る基準に非喫煙であること以外に、血圧値やBMIを加えているものもあります。

それでは、具体的にどのくらい保険料が安くなるのか見てみましょう。

●「定期保険プレミアム」の場合

チューリッヒ生命の掛け捨て型の定期保険「定期保険プレミアム」で、30歳男性、保険金1,000万円、10年更新タイプで試算してみます。過去1年以内に喫煙なし、最低血圧が80mmHg、最高血圧が120mmHg以下の条件をすべて満たした場合だと、毎月の保険料は1,050円でした。これは条件を満たさない人よりも30%安い金額です。

●「こだわり収入保障」の場合

次に、マニュライフ生命の収入保障保険「こだわり収入保障」で、30歳男性、保険期間が60歳まで、毎月の給付額が15万円で試算してみます。過去1年以内に喫煙なし、最低血圧が90mmHg、最高血圧が140mmHg以下の条件をすべて満たした場合だと、毎月の保険料は3,500円でした。これは条件を満たさない人よりもおよそ32%安い金額です。
保険会社や保険の種類にもよりますが、非喫煙者割引ではおおむね10%〜30%ほど安くなる場合が多いようです。やはり健康であるほどメリットは大きいといえます。

非喫煙者の判定は「告知」と「コチニン検査」の2段構え

非喫煙者であるとの判断は、本人の告知と検査によって行います。非喫煙者割引のある保険を扱う会社の多くが、非喫煙者である期間を過去1年間と定めていますが、メットライフ生命は過去2年間と長めに設定しています。
検査については専用の器具を使い、採取した唾液で「コチニン検査」を行うのが一般的です。コチニンとは、タバコに含まれるニコチンが体内に入って変化した物質のことで、唾液に含まれるコチニンの量により喫煙の有無を判定します。

一度検査をパスして保険契約が成立すれば、その後に喫煙を開始したとしても非喫煙者割引が適用されなくなることはありませんが、更新型の商品の場合、更新時に再度審査が必要となる場合があるので注意しましょう。

コチニン検査の器具
【コチニン検査】大きな綿棒のようなものを、頬と歯茎の間に約3分間入れて、綿棒に含まれた唾液の成分を検査します。

「加熱式たばこ」は喫煙に該当する?

いま、喫煙者の間で流行の加熱式たばこは喫煙に該当するのでしょうか。
加熱式たばこは、煙を出さずにたばこの味や香りを味わえる商品で、フィリップモリスジャパンの「IQOS(アイコス)」や、JTの「プルーム・テック」が代表的です。
今回、加熱式たばこが喫煙に該当するのか、保険会社の大手4社の約款で確認し、記載がなければお客様センターに問い合わせて調査しました。
同時に、口腔内に直接含んでタバコの香りや味を楽しむ「嗅ぎたばこ」についても伺いました。その結果が以下です。

加熱式タバコ 嗅ぎタバコ
東京海上日動あんしん生命
アフラック
ソニー生命 (☓) (☓)
チューリッヒ生命

調査の結果、4社とも加熱式たばこも嗅ぎたばこも喫煙に該当するとのことでした。

ただし、ソニー生命は「コチニン検査で引っ掛かると思うので、おそらく喫煙に該当する」との回答だったので、告知の際に喫煙に該当するかはわかりませんでした。

従来の紙巻きたばこが葉たばこを燃やして煙を吸うのに対し、加熱式たばこは葉たばこを加熱し蒸気を吸うというものです。
そして、この蒸気にはニコチンなどの身体に有害な物質も含まれています。
煙が出ないからといって身体への害がないというわけではありませんから、加熱式タバコを使用しているにも関わらず喫煙者であると申告していないと告知義務違反になるということでしょう。
コチニン検査でも陽性となる可能性が高いと思われます。
これと同様に、嗅ぎたばこについても、粉状のたばこ葉が入った袋を唇と歯茎の間に挟んで使用する際、体内にニコチンを摂取することになりますので、喫煙に該当するとの回答だったものと思われます。

●「ニコチンパッチ」の扱いは保険会社による

では、禁煙するために使用される貼り薬、いわゆる「ニコチンパッチ」についてはどうでしょうか。こちらも約款とお客様センターで調査してみました。

ニコチンパッチ
東京海上日動あんしん生命 喫煙に該当する
アフラック ニコチンパッチの使用に関わらず過去1年間、非喫煙であったのかどうかで判断
ソニー生命 禁煙期間や検査結果による
チューリッヒ生命 検査で陽性となり、喫煙者に該当する可能性が高い

こちらは、保険会社によって扱いは異なるようです。
東京海上日動あんしん生命では、ニコチンパッチの使用も喫煙に含めると明確に記載がありましたが、その他3社は禁煙期間やコチニン検査の結果によるとのことでした。
ただ、ニコチンパッチを使用すれば皮膚からニコチンが摂取されますので、確実に非喫煙者割引の適用を受けたいのであれば、こちらの使用も避けたほうが無難でしょう。

せっかく保険に入るなら、お得な割引制度は活用したいもの。会社によって適応される条件には差があるので、契約希望者の状況を見ながら事前にしっかりと各社への確認が必要です。
念のため複数の会社の適用条件を比較して、問い合わせてみるのもよいかもしれません。