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保険分野にも迫るテクノロジーの波 〜ソフトバンクが米スタートアップ企業「レモネード」に出資〜

    レモネードのイメージ

    インステック「レモネード」への出資

    2017年12月19日、米の保険会社で、スタートアップ企業のレモネードは、ソフトバンクから1億2000万ドルの出資を受けると発表しました。資金は海外での事業拡大に充てる方針で、レモネードのシャイ・ウィニガー社長はこの出資に関して、「ソフトバンクは我が社にとって理想的なパートナーになる」と述べています。

    この出資によって、インステック分野に新たな動きが生じることになります。

    レモネードの事業とは

    アメリカの保険会社であるレモネードは、保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせるインステック(InsTech)企業です。

    レモネード主に家財保険を扱う企業で、AIのチャットボット(自動対話システム)を利用して、スマホ上で全ての保険の手続きを終わらせることを強みに持っています。自社で運営する保険を販売していることも、成長途中のインステック分野では新たな試みと言えるかもしれません。

    レモネードが保険を成約するまでの手続きは簡単で、まずレモネードのサイトにアクセスし、そこで保険の見積もり画面へと進む。そうすると“Maya”と呼ばれるチャットボットが起動し、彼女の質問に応えるだけでピッタリの保険が提示される。そしてそれをスマホ上で決済すれば、保険の販売が終了するというもの。今までの販売代理店や営業マンが販売していた保険と比べるとシンプルそのもの。

    さらに彼らは非常に魅力的なビジネスモデルを提示しています。従来の保険モデルであれば、未支払いの保険金は全て保険会社の収益となりますが、レモネードはそれをせずに、20%の手数料を取るほかは、全て保険金支払いに回し、それでも余った未支払いの保険金額は全て顧客が指定した分野へと寄附される仕組みになっているのです。道徳的側面も重視して、顧客を集めようというビジネスモデルともいえます。

    このような会社にソフトバンクが出資したとなれば、新たな保険分野への進出や海外への進出も現実的になり、インステックの普及もさらに進むことになるかもしれません。

    保険分野に革新をもたらすインステックの動き

    インステックの先端企業にソフトバンクが出資したということで話題となってますが、インステック全般でみると、今後どんな動きが予測されるのでしょうか。

    そもそもインステックはレモネードのようなスタートアップ企業だけでなく、大手企業でも積極的に取り組みが始まっている事業です。

    例えば第一生命は2015年12月に「InsTechイノベーションチーム」を立ち上げました。ビッグデータやAIなど最新のテクノロジーを活用して生命保険事業独自のイノベーションを創出する取り組みです。あるいは損保ジャパン日本興亜ホールディンクスは2016年4月に有望なベンチャーの発掘を目的とする「SOMPOデジタルラボ」を東京とシリコンバレーに開設し、新たな技術開発への一歩としています。

    インステックはレモネードのようなAIを利用したチャットボットとの会話によって、加入に対する手続きを簡略化することができますが、活躍するのはその分野だけではありません。

    例えばビッグデータを利用することで、保険加入者の裾野を広げることが可能。例えば、喫煙者や持病のある人は保険への加入が制限される場合がありますが、健康に関するビッグデータが解析されることで、様々な条件分けや予測が可能になり、従来は保険に入れなかった人も、入ることができるかも知れません。ビッグデータを活用することで、新たな保険商品が生まれる、あるいは顧客への新たなコンサルティング方法が生まれる可能性があるのです。

    また、IoT機器の活用という面もインステックの成長分野です。ウェアラブル端末を利用することで、顧客の健康状態を保険料に反映させたり、自動車にIoT機器を付けて走行距離などに応じたさらに細かな自動車保険プランを開発することもできます。

    テクノロジーの波は保険分野にも確実に迫ってきています。レモネードもその一角であり、今後このようなインステック分野へ、ベンチャーなどとの協業も含め大手保険会社も進出していくでしょう。