2017年12月21日、民泊仲介業界の最大手であるAribnb(エアビーアンドビー)と損害保険ジャパン日本興亜が業務提携することが明らかになりました。
Airbnbは、2008年に創業した民泊仲介業者で、世界191カ国、6万5000以上の都市に仲介チャネルを有しており、近年拡大してきている民泊事業のマーケットリーダーの地位を確立している。Airbnbが日本の保険会社と包括連携協定を締結するのは今回が初めてで、損保ジャパンは自社で提供しているサービスをAirbnbのサービスと融合させることで、安心で安全な民泊事業の普及や拡大、さらなる品質の向上を目指すとしている。
●Airbnbと損保ジャパンの提携内容は?
Airbnbと損保ジャパンの具体的な提携内容を見てみると
(1) 住宅宿泊事業サービスの質の向上に資するホスト業務支援サービスの検討・開発
(2) 住宅宿泊事業サービスに関するリスク分析・新商品の検討
(3) Airbnb コミュニティ発展に資するサービス・枠組みの検討
(4) 古民家再生支援、リノベーションに関する連携の検討
(5) 地方創生に関する取組みの支援
(6) その他両社が協議して必要と認める研究
といった事業について連携を行うとしています。
この業務提携により、民泊提供に伴う物損やトラブルに対する保険はもちろんのこと、民泊事業に関する新たなサービス開発や分析に関する提携も行われると見られ、民泊業界と保険業界に新たな動きが生じることになります。2018年6月に施行される「住宅宿泊事業法(新民泊法)」を睨んでの動きといっていいでしょう。
●業務提携の背景
損保ジャパンがAirbnbの業務提携に踏み出した背景として、同社が民泊事業に対し新たな保険を発売したこともあります。
同社は2016年11月に、シェアリングエコノミー協会会員向けの保険商品として、『オールインワンパッケージ(利用者補償型)』の販売を開始している。
そもそも近年拡大する民泊やカーシェアに代表されるシェアリングエコノミーはCtoCという側面が有り、プラットフォーム事業者は、サービス提供者(ホスト)とサービス利用者(ゲスト)がトラブル無くサービスを利用できるように、様々な対策をする必要がある。例えば物損事故や利用者間のトラブルへの対策が挙げられます。
そこで損保ジャパン日本興亜は、プラットフォーム事業者とホスト間だけでなく、そこにゲストを含めた保険を提供することで、さらにプラットフォーム事業者が抱えるリスクに総合的に対応する形をとりました。
この保険の強みとして、このような三者含めた総合的な保険であることに加え、様々な補償やサービスをカスタマイズして提供できる点(物損補償だけでなくゲストの病気やケガに対する治療費などの補償なども提供できる)や、年間の契約であるため、プラットフォーム事業者が包括的に補償を提供できる点が挙げられています。
損保ジャパンは、この保険によって、シェアリングエコノミーの更なる発展に加え、現在国が目指している地方創生や一億総活躍社会にも貢献をすることで、「安全・安心・健康」な社会を作り上げ、今後日本が抱える社会的課題への解決を目指すとしています。
損保ジャパンはこのような民泊などのシェアリングエコノミーに対する保険を戦略的に重要視しており、この提携を機に新たなマーケットプレイスへと踏み出すことを狙っていると見られます。
●注目される「民泊」
このような民泊に積極的に働きかける動きは、自治体、観光関連、保険などの関連分野でますます活発化するでしょう。なぜなら、今年、2018年6月に「住宅宿泊事業法(新民泊法)」が施行され、民泊が本格的に動き出すからです。
そもそも人を普通の住宅に宿泊させる「民泊」自体新しいサービスであり、法律ではそのルールなどが詳しく定められていませんでした。しかし、近年の民泊業者の拡大や東京オリンピックに向けた来日外国人増に備え、新たな法律「住宅宿泊事業法(新民泊法)」が制定されることとなりました。この法律は2018年6月から施行される予定で、民泊について包括的に定められています。具体的には民泊の定義や条件(180日を超えて宿泊させてはならない・標示が必要)などが決められ、届け出も義務付けられています。
特に注目すべきなのが、住宅宿泊事業者への義務だ。衛生の確保や安全の確保、外国人旅行者への快適性の確保、周辺地域への騒音などの対策などが定められ、民泊提供者は従来以上に様々な対応が迫られています。
そこでそのような義務に対応するために、自治体や観光関連事業者、保険業者などが新たなサービスを提供することになるでしょう。特に今回のAirbnbと損保ジャパンの提携のように、従来は民泊と関係のないような会社、あるいは一部分でしか関係の無かったような会社が大きく関わることで、新たな民泊サービスが生まれる可能性もあります。