セカンドライフ

認知症の不安に備える成年後見制度とは?

成年後見制度のイメージ

判断力が衰えた時、自分の財産を守るために使える制度です。サポート内容や、手続きのしかたを知っておくと安心です。

判断力が衰えた時、保護・支援を受けられる制度

毎日の生活の中には、気づいていなくても「契約をする」場面がたくさんあります。スーパーやコンビニでパンなどを買うことも、契約書こそ作りませんが契約です。契約をするには、自分が行ったことの結果が、どのようになるか判断できる能力が必要です。もし、認知症になってしまったり、病気が原因で判断能力が衰えてしまった時、契約で不利益を被らないよう備えておく制度が「」です。 成年後見制度には、つぎの2つの制度があります。

●任意後見制度
任意後見制度は、自分の判断能力が十分あるうちに、支援を頼んでおく制度です。あらかじめ、信頼できる支援者と任意後見契約を結び、公正証書で、財産や介護のことなど、支援してもらう内容を決めておきます。
将来、判断能力が低下した後は、家庭裁判所で任意後見監督人(後見人の仕事をチェックする人)が選任され、任意後見制度が始まります。ただし、任意後見人には、取消権などはないので、もし不利益な契約をしてしまった場合でも、後から取り消してもらうことはできません。

●法定後見制度
すでに、判断能力が不十分な本人に代わって、契約や契約の取消しをしてもらう制度です。財産管理や、契約などをすることが困難になっている場合に利用します。①後見②保佐③補助という3つの制度があり、本人の判断能カの状態によって、どの制度を利用するかが決まります。 「後見」は、本人の判断能力が非常に衰退している場合に利用します。「成年後見人」が本人に代わって、契約や財産管理などの支援をします。たとえば、預貯金の管理や記録、介護認定の手続き、ホームの入居契約など、暮らし全般にわたる支援です。ただし、自宅の処分などについては、家庭裁判所の許可を得て行います。また、成年後見人は、家族が知らないうちに、高額な商品を売りつけられた場合など、後から取り消すこともできます。 「保佐」は、判断能力にかなり衰えがある場合に利用されます。しっかりしていることもあるけれど、契約内容などをよく理解できないことが多い場合などです。保佐の場合、契約や財産の管理は、原則本人がしますが、お金の貸し借りなど、「保佐人」の同意を必要とする行為が、法律でいくつか決められています。 「補助」は、本人の判断能力が不十分になってきている時に利用します。通常の行為は自分でできても、物忘れがひどく、大事な契約などをするには支援が必要な場合です。「補助人」も、同意や代理、取り消しをするという支援をします。保佐人と違い、法律で決められた同意権はありません。同意が必要な行為は、あらかじめ申し立て人が指定し、家庭裁判所に定めてもらう必要があります。

成年後見制度のイメージ

後見人は誰にお願いすればいいの?

●任意後見制度の場合
任意後見制度では、元気なうちに後見人を選ぶため、自分が希望する「後見人」を選べます。任意後見契約を結び、公証人役場で「公正証書」という契約書を作っておきます。生活の面、財産の面で支援してほしいことや、報酬は、あらかじめ自由に決めます。後見人は、裁判所が選任した任意後見監督人に相談しながら、本人の支援をすることになります。

●法定後見制度の場合
法定後見制度では、後見人は家庭裁判所の審判によって選任されます。ただし、誰になってもらいたいかは、本人が希望することができます。親族を希望しても、財産が多い場合、関係する人の間で揉め事が起こりそうな場合は、司法書士や弁護士、社会福祉士といった専門家が選任されることもあります。また、法律や福祉にかかわる法人もなることができます。 最高裁の調査によると、親族以外の第三者が後見人に選任されるケースは年々増加しており、2015年はおよそ7割。中でも、司法書士は、通称「リーガルサポート」(正式名:公益社団法人成年後見センター・リーガルサポート)という、安心して後見人を依頼できるしくみを提供しています。 また、近年、注目されているのが、「市民後見人」です。同じ地域に住む市民が、高齢者を支えようというもので、後見人の養成講座なども行われています。高齢者が増える将来に向け、その役割に期待がかかりそうです。

「法定後見人制度」の利用には申し立ての手続きが必要

成年後見制度のうち、法定後見人制度を利用したい場合は、家庭裁判所に申し立てをすることから始まります。 申し立てができるのは、本人、配偶者、子、親、兄弟など4親等内の親族です。もし、身寄りがなければ、市町村長が申し立てできることになっています。 手続きは、医師の診断書など、必要な書類をそろえ、家庭裁判所に提出します。自分で手続きするのが難しければ、司法書士や弁護士などの専門家に頼みましょう。家庭裁判所の調査官が本人や申立人に事情をたずねるなどした後、必要と認められれば、成年後見人よる支援がスタートします。また、後見人や内容は、法務局に登記されます。本人が死亡した時、判断能力が回復した時には、後見は終了します。
気になる申し立ての費用は、印紙や医師の診断書などで1.5〜2万円程度。任意後見制度の場合は、公正証書作成費用などで2.5万円〜3万円程度です。なお、専門家に手続きを依頼する場合や、鑑定が必要な場合は別に費用がかかります。近くの家庭裁判所や専門家などに、あらかじめ確認するようにしましょう。

法定後見開始までの流れ